本記事では欧米のトレーダーが好んで使うプライスアクションについてまとめました。
プライスアクションとは一般的にはローソク足のパターンのことを指すことが多いですが、その真髄はローソク足から買い手と売り手の攻防を読み取ることにあると考えます。
本記事はそうしたプライスアクションの本質についても考えていきたいと思います。
- 1 前書き
- 2 本記事で取り上げるプライスアクションの分類
- 3 ローソク足の定義
- 4 プライスアクションのパターン
- 4.1 Hammer / Shooting Star
- 4.2 Dragonfly Doji / Gravestone Doji
- 4.3 Long-legged Doji
- 4.4 Bullish Marubozu / Bearish Marubozu
- 4.5 Bullish Engulfing Pattern / Bearish Engulfing Pattern
- 4.6 Piercing Pattern / Dark Cloud Cover
- 4.7 Bullish Reversal / Bearish Reversal
- 4.8 Tweezer Bottom / Tweezer Top
- 4.9 Morning Star / Evening Star
- 4.10 Three White Soldiers / Three Black Crows
- 4.11 Runway Up / Runway Down
- 4.12 Rising Three Method / Falling Three Method
- 4.13 Doji
- 4.14 Inside
- 4.15 Bullish False Breakout / Bearish False Breakout
- 4.16 Bullish Fake Setup / Bearish Fake Setup
- 5 まとめ
- 6 MT4用プライスアクション検知インジケータ
前書き
プライスアクションの源流と言えるローソク足や酒田五法は日本製ですが、その研究や活用は欧米の方が広まっていてプライスアクションという形で体系立てられています。実際、プライスアクションについての日本語書籍は圧倒的に少なく(しかも結局のところ翻訳版だったり…)、プライスアクションについて体系的に学ぶには洋書を読むしかありません。またプライスアクションの情報は英語であればネットからでも十分良質な情報を得られます。
このように今やプライスアクションの本場は欧米であるため、欧米人が認識しているプライスアクションのパターンを学んだ方が効果的だと考えます(加えてFX相場は欧米の影響力が強いですし)。そこで本記事では欧米人が使うプライスアクションを中心にまとめました。ただし日本語でプライスアクションを扱っていて筆者が良書だと思う以下の本で取り上げられているプライスアクションは含めます。この本はダマシを扱っている点が秀逸でおすすめです(書評も別記事に書いています)。
筆者はプライスアクションは空手の型(形)のようなものだと捉えています。
空手の型は仮想敵を想定し、そのあるゆる攻撃に対しての受けや反撃など一連の動きをまとめたものです。型の本質は動きを覚えることにある訳ではありません。型を反復練習することで、とっさの攻撃に対しても無駄なく対応し反撃できるようになることに意味があります。そして基本の型をマスターしていると少し違う角度からの攻撃に対しても対処できるようになります。
プライスアクションにおいても数種の基本パターンを題材にして値動きの意味を理解できるようになります。そして空手の型同様プライスアクションの名前や形を暗記することに意味はありません。プライスアクションのいつくかのパターンから買い手と売り手のどちらが優位なのか、もしくは拮抗しているのかを読み取れるようになることにこそ本質があると考えます。さらに基本のプライスアクションパターンと多少異なったローソク足の形からでも買い手と売り手の攻防を感じ取れるようになることが肝要です。
本記事で取り上げるプライスアクションの分類
本記事で取り上げるプライスアクションは下表の通りです。
ReversalとContinuationとFakeoutのプライスアクションは「/」を挟んで左右対(買い優位 / 売り優位)になっています。
分類 | プライスアクション |
Reversal (トレンド反転) |
– Hammer / Shooting Star – Dragonfly Doji / Gravestone Doji – Long-legged Doji – Bullish Marubozu / Bearish Marubozu (Continuationの場合も) – Bullish Engulfing Pattern / Bearish Engulfing Pattern – Piercing Pattern / Dark Cloud Cover – Bullish Reversal / Bearish Reversal – Tweezer Bottom / Tweezer Top – Morning Star / Evening Star – Three White Soldiers / Three Black Crows |
Continuation (トレンド継続) |
– Bullish Marubozu / Bearish Marubozu (Reversalの場合も) – Runway Up / Runway Down – Rising Three Method / Falling Three Method |
Indecision (膠着状態) |
– Doji – Inside |
Fakeout (ダマシ) |
– Bullish False Breakout / Bearish False Breakout – Bullish Fake Setup / Bearish Fake Setup |
ローソク足の定義
本記事で使用するローソク足の各部位の名称や色は下図の通りです。
なお以下で説明するプライスアクションのパターンの中で陽線と陰線どちらでも構わない場合は、灰色にしています。
プライスアクションのパターン
プライスアクションの基本パターンを一つずつ説明していきます。
ReversalとContinuationとFakeoutについては買い優位の方を基準に記述しています。売り優位の方は適宜読み替えてください。
Hammer / Shooting Star
基本定義
- 実体が短く上方にある
- 上ヒゲが短い、あるいはない
- 下ヒゲが長い
暗示内容
安値圏で出現すると上昇に転じる可能性がある
補足説明
Hammerは一旦売り優位に価格が下がったが、後半に買い手の力が強まって価格を上げてクローズしている形です。このことから買い優位と考えられるプライスアクションになります。
陽線であることをHammerの定義に加えているものも見受けられますが、売り手が押し返されたことが重要なので陽線であるかどうかは本質的には重要ではありません。
Dragonfly Doji / Gravestone Doji
基本定義
- 実体がないか極めて小さい
- 終値が高値と一致しているかかなり近い
- 下ヒゲが長い
暗示内容
安値圏で出現すると上昇に転じる可能性がある
補足説明
Dragonfly Dojiは最初売り手が優位で価格を下げるも安値で大きく反発して買い手が始値まで盛り返した形です。構造は前述したHammerと同じで買い優位と考えられるプライスアクションです。
Long-legged Doji
基本定義
- 実体がないか極めて小さい
- 終値がローソク足の中心付近にある
- ヒゲが長い
暗示内容
- 安値圏で出現すると上昇に転じる可能性がある
- 高値圏で出現すると下降に転じる可能性がある
補足説明
Long-legged Dojiは買い手と売り手の双方が同じくらい勢いを強めたが最終的には拮抗して終わった形です。力がくすぶった状態で安値圏であれば買い手が値頃感から優位になる可能性があるプライスアクションです。
Bullish Marubozu / Bearish Marubozu
基本定義
- ヒゲがない大きい陽線
暗示内容
- 安値圏で出現すると上昇に転じる可能性がある(Reversal)
- 上昇トレンドで出現すると依然買い優位(Continuation)
補足説明
Bullish Marubozuは一方的に買いが入っている形です。
他のプライスアクション(Engulfing Patternなど)と組み合わさると、よりシグナルの信頼性が高まります。
Bullish Engulfing Pattern / Bearish Engulfing Pattern
基本定義
- 1本目のローソク足が陰線で2本目が陽線
- 2本目のローソク足実体が1本目の実体を包んでいる(ヒゲは関係なし)
暗示内容
安値圏で出現すると上昇に転じる可能性がある
補足説明
Bullish Engulfing Patternは1本目のローソク足で売り優位に価格が下がったが、2本目のローソク足で買い手の力が増し最終的には1本目のローソク足の始値を超えて価格がクローズしている形です。このことから買い優位と考えられるプライスアクションになります。
Piercing Pattern / Dark Cloud Cover
基本定義
- 1本目のローソク足が陰線で2本目が陽線
- 2本目のローソク足の終値が1本目の実体の概ね半値以上でクローズ
暗示内容
安値圏で出現すると上昇に転じる可能性がある
補足説明
Piercing Patternは1本目のローソク足で売り優位に価格が下がったが、2本目のローソク足で買い手の力が増し最終的には1本目のローソク足実体の上方でクローズしている形です。このことから買い優位と考えられるプライスアクションになりますが、Bullish Engulfing Patternよりは弱いシグナルになります。
Bullish Reversal / Bearish Reversal
基本定義
- 2本目のローソク足の安値が1本目の安値を下回っている
- 2本目のローソク足の終値が1本目のローソク足実体の上辺もしくは上抜いてクローズしている
暗示内容
安値圏で出現すると上昇に転じる可能性がある
補足説明
Bullish Reversalは2本目のローソク足で1本目のローソク足の安値を一旦下回るも、その後買い優位に転じて1本目のローソク足実体の上辺または上抜いてクローズしている形です。このことから買い優位と考えられるプライスアクションになります。
Bullish Engulfing PatternとPiercing Patternが合わさったようなパターンですが、一旦1本目のローソク足の安値を下回ってから価格を上げていることから買いが強いことが伺えます。
Tweezer Bottom / Tweezer Top
基本定義
- 1本目と2本目のローソク足の安値が揃っている。2本目は陽線が望ましい。
暗示内容
安値圏で出現すると上昇に転じる可能性がある
補足説明
2本目のローソク足で1本目の安値を試しても反発し下げ止まりが確認できるので買い優勢と判断できます。2本目は陽線の方が強く反発していると言えるので信頼性は上がります。
他のプライスアクションと組み合わさることが多く(Engulfing Patternなど)、その場合はより強いシグナルになります。
Morning Star / Evening Star
基本定義
- 1本目のローソク足は陰線
- 2本目のローソク足は小さい
- 3本目のローソク足は陽線で、1本目のローソク足実体の概ね半値以上でクローズしている
暗示内容
安値圏で出現すると上昇に転じる可能性がある
補足説明
Morning Starは1本目のローソク足で売り優位で価格を下げた後、2本目の足で買いも売りもあまり入らず相場が逡巡している状態です。3本目のローソク足で結局買いが優位に立ち1本目のローソク足の上辺もしくは上抜いてクローズしている形です。このことから買い優位と考えられるプライスアクションになります。
Three White Soldiers / Three Black Crows
基本定義
- 3本のローソク足とも大きい実体の陽線でヒゲは小さい
- 2本目、3本目のローソク足の始値は前の足の実体の中に収まっている
- 2本目、3本目のローソク足の終値は前の足の高値を越えている
暗示内容
安値圏で出現すると上昇に転じる可能性がある
補足説明
Three White Soldiersは連続して前の足の高値を大きな陽線で上抜いてクローズするほど買い手の勢いが強い形となります。買い手が連続して勝利していることから買い優位と考えられるプライスアクションになります。
Runway Up / Runway Down
基本定義
- 中心のローソク足の高値が前N本の最高値より高い
- 中心のローソク足の安値が後N本の最安値より低い
暗示内容
上昇トレンドで出現すると依然買い優位
補足説明
Runway Upは前N本の最高値を超えて上昇した後、後N本の安値が中心のローソク足の安値を下回らない形です。すなわち価格水準が1段階上昇したことを意味し、買い優位が継続しているプライスアクションと考えられます。
Rising Three Method / Falling Three Method
基本定義
- 1本目と5本目のローソク足は大きな陽線で5本目の終値は1本目の高値を上抜いてクローズしている
- 2本目、3本目、4本目のローソク足は1本目高安の範囲に収まり小さい。理想は3本とも陰線。
暗示内容
上昇トレンドで出現すると依然買い優位
補足説明
Rising Three Methodは1本目で買い優位で価格を上昇させ、その後3本のローソク足では買い手、売り手どちらも様子見状態が続きます。陰線が続けば1本目の上昇の利確が少し入っている状態とも言えます。しかしそれもあまり入らず5本目の足で買い手が適正価格と見て多く入っきた形です。これより買い優位が継続している局面と判断できます。
Doji
基本定義
- 実体がないか極めて小さい
- 終値がローソク足の中心付近にある
- ヒゲが短い
暗示内容
買いも売りも拮抗していてどちらが強いとも言えない
補足説明
Dojiは買い手も売り手も同じくらい勢いがなく、最終的には始値から動いていない形です。買いなのか売りなのか決めかねていてパワーバランスが拮抗した状態です。
Inside
基本定義
- 2本目のローソク足が1本目の高安内に収まっている
暗示内容
買いも売りも強いとは言えない
補足説明
Insideは2本目のローソク足で1本目の高安どちらも抜くことが出来ていないので買いと売りどちらが強いとは言えない形です。
欧米ではHaramiとも呼ばれ、その場合は特に1本目が大きな実体の足で2本目が小反発した形で言われることが多いです。その形の際、Reversalのシグナルと紹介されることが多いですがHaramiは本来膠着状態を表すのでMorning Starのように3本目を待たないと方向性は判断できないと考えます。
Bullish False Breakout / Bearish False Breakout
基本定義
- 直近安値をヒゲで抜けた陽線
- 直近安値より上でクローズ
暗示内容
安値圏で出現すると買い優位になる可能性がある
補足説明
Bullish False Breakoutは売り手が直近安値を割る攻勢に出たものの買い手の反撃にあい直近安値の上で最終的にはクローズした形です。直近安値割れで下に行くと見せかけて上昇に転じた為、売り手がパニックになり買い手の勢いが強まる可能性があります。
Bullish Fake Setup / Bearish Fake Setup
基本定義
- レンジ下限をヒゲで抜けた陽線
- レンジ下限より上でクローズ
暗示内容
買い優位になる可能性がある
補足説明
Bullish Fake Setupは売り手がレンジ下限を割る攻勢に出たものの買い手の反撃にあいレンジ下限の上で最終的にはクローズした形です。レンジ下限割れで下に行くと見せかけて上昇に転じた為、売り手がパニックになり買い手の勢いが強まる可能性があります。
まとめ
本記事では欧米で使われるプライスアクションについて基本的なパターンを紹介しました。紹介したパターン以外にも名前が付いたプライスアクションはありますが、前書きにも書いた通りパターンを覚えることが重要なのではなくパターンを教材に買い手と売り手の攻防を感じ取れるようになることが重要だと考えます。その教材となるパターンとしては、本記事で紹介した基本パターンで十分だと思います。
最後に、プライスアクションについて興味を持っている読者の方であれば承知していることだと思いますが、プライスアクションだけを頼りにトレードすることは出来ません。プライスアクション・パターンはチャートにそこら中現れるので、これだけでは負けまくると思います。ラインやインジケータなども使ってエントリー判断をし、エントリータイミングの最終判断にプライスアクションを使うと効果的です。
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